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親会社からグループ会社に役員を送り込んだ際の役員給与の扱い

2015/09/10

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グループ会社の業績悪化等に伴い、親会社から役員が送り込まれ、その際の役員給与も親会社が負担するという事例は珍しくありません。

その場合、役員給与や、親会社とグループ会社との給与差額は親会社の損金として認められるのでしょうか?

役員報酬に寄付金の課税関係が生じるか否かは業務実態で判断

 

次のような事例があるので、考えてみましょう。

子会社X社の経営を立て直すために、親会社A社の営業部長甲氏をX社の代表取締役とし、役員給与は全額親会社から支給することとしました。

また、甲氏の右腕であった敏腕営業マン乙氏も子会社X社に転籍することに。

乙氏の給与については、A社とX社との給与の差額をA社が負担することとしました。

この場合、甲氏の役員給与と乙氏の給与差額は全額A社の損金として処理できるのでしょうか?

この事例の場合に、A社が負担する甲氏の役員報酬に寄付金の課税関係が生ずるか否かは、甲氏の業務の実態により判断するべきと考えられます。

 

今回の事例で甲氏が親会社A社の営業部長の職務に従事することなく、X社の代表取締役の職務を全うしていたという事実が客観的に認められるのであれば、寄付金の課税関係が生ずることに異論はないと考えらえます。

しかし、甲氏はX社の代表取締役は名目だけで、従来通りA社の営業部長として従事しているような場合には、甲氏の役員給与負担額は、A社において損金経理となると考えられます(i) 。

 

次に、乙氏に支給される給与差額が損金として処理できるかどうかという論点については、基本通達9-2-47(ii)に出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するために出向者に対して支給した給与の額は、当該出向元法人の損金の額に算入するという通達があります。

この通達では、出向元法人と出向者との間で雇用契約が締結されている以上、出向者は出向後も出向元法人と同様の労働条件を要求できることを明らかにしたもの考えられます。

今回の事例は、出向ではなく転籍であるために乙氏とA社との雇用契約は切れることになります。

しかし、上記通達の趣旨からすると今回の転籍はA社の業務遂行のために行われることからA社からX社に対する寄附ではなく、A社の損金として処理しても問題ないと考えられます。

詳しいことは松岡公認会計士事務所にお問い合わせください。

 

(脚注)

i国税不服審判所昭和60年11月22日裁決では、原処分庁が、A社が支払う甲氏の役員報酬についてX社に対する寄付金とするべきという主張に対して、審判所の判断は、甲氏はA社の業務に従事していたことは認められるが、X社の経営に参画していたことを認めることはできないから、甲氏の給与をA社の損金の額に算入したことを不相当とすることはできないと判断しています。

ii (出向者に対する給与の較差補填)

9-2-47 出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するために出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。

(注) 出向元法人が出向者に対して支給する次の金額は、いずれも給与条件の較差を補填するために支給したものとする。

1 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額

2 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額